泌尿器科

 当科では泌尿器科領域のあらゆる疾患に対応できるよう努力しています。特に尿路性器腫瘍の治療に関しては、手術療法、放射線療法および抗癌化学療法との組み合わせによる集学的治療を行えることが特色です。

 腎癌に関しては、血尿などの症状が出現する前に腹部エコーやCTなどで偶然発見される症例が大部分となっています。開業医の先生方に早期発見していただき、手術を行うことで根治が期待できます。手術はこれまで腹腔鏡下手術を基本としていましたが、2024年1月よりダヴィンチXiを用いたロボット支援腎摘除・腎部分切除術を導入しています。また、進行癌の患者さんには、分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬を用いた全身治療を行っています。

 前立腺癌に関しては、前立腺腫瘍マーカー(PSA)の普及により早期癌が多数発見できるようになり、根治手術による完治が可能となっております。今後もPSA高値の患者さんには、積極的に前立腺生検を施行し早期癌発見に努めて行きたいと考えております。また、手術療法としては2022年10月よりロボット支援前立腺全摘除術を、放射線治療としてはIMRT(強度変調放射線治療)を行っています。また、進行癌の患者さんには、新規ホルモン剤や抗癌剤を用いた全身治療を行っています。

 膀胱癌に関しては、筋層非浸潤癌には内視鏡下腫瘍切除術(TUR-Bt)を行っています。筋層浸潤癌には膀胱全摘除術+尿路変向術(尿管皮膚瘻、回腸導管、回腸利用新膀胱造設)が標準治療ですが、前述したような集学的治療により膀胱温存療法を選択できる場合もあります。同じ尿路上皮癌の中で比較的まれな腎盂尿管癌に対しては、ロボット支援腎尿管全摘除術を行っています。また、進行癌の患者さんには、抗癌剤や免疫チェックポイント阻害薬、抗体薬物複合体を用いた全身治療を行っています。

 前立腺肥大症の治療に関しては、薬物療法だけでなく、重症度の高い患者さんには内視鏡手術により症状の改善が期待できる場合があります。当院では、ホルミウムレーザーを用いた前立腺核出術(HoLEP)を行っています。また、全身状態があまり良くない方や抗血栓薬内服を中止できない方でも手術を受けていただけるように、2024年12月より低侵襲な経尿道的前立腺吊り上げ術(PUL)を導入しました。

 過活動膀胱の治療に関しては、生活指導や薬物療法が基本ですが、難治性の患者さんに対しては、2024年4月よりボツリヌス毒素(BOTOX)膀胱壁内注入療法を導入しています。

 尿路結石症の治療に関しては、自然に排石しない患者さんに対して、体外衝撃波結石破砕術(ESWL)あるいは経尿道的腎/尿管砕石術(TUL)を行っています。また、前述の治療で破砕できないような大きな腎結石に対しては、2024年1月より経皮・経尿道的同時砕石手術(ECIRS)を導入しています。

取扱い疾患

症候分類 具体的疾病名・症状
前立腺疾患 前立腺肥大症、前立腺癌
腫瘍 膀胱癌、腎盂・尿管癌、腎癌、精巣腫瘍、陰茎癌
尿路結石症 腎結石、尿管結石、膀胱結石
尿路感染症 膀胱炎、腎盂腎炎、尿道炎、前立腺炎
内分泌疾患 副腎腫瘍
先天性形態異常 包茎、水腎症、膀胱尿管逆流、停留精巣
膀胱機能障害 神経因性膀胱、過活動膀胱、腹圧性尿失禁
外傷 腎外傷、膀胱損傷、尿道外傷

専門外来

尿失禁外来
診療内容 失禁は、老化による機能低下によるものだけでなく、年少から出産年齢に至る時期に起こる疾患や外傷による機能障害、心理的な問題など様々な要因が引き金となって引き起こされる症状です。
しかし、対象者が満足な治療やケアを受けいれる専門外来は少なく、また失禁という症状やデリケートな部分の診察となるため、病院にかかりにくい実情もあります。
当院では、適切な診断と治療、ケア指導の提供によって、尿失禁の改善を図り患者さまの生活の質(QOL)の向上をさせるため、「尿失禁外来」開設いたします。(平成22年11月16日開設)
診察日時 毎週火曜日 午後3時~ ※完全予約制
担当医師 児玉 芳季(泌尿器科 部長)
担当看護師 佐藤美香(皮膚・排泄ケア認定看護師)
受付方法 かかりつけ医からの紹介(患者支援センターにて予約が必要)もしくは、紹介以外の方は初診窓口にて手続き後、予約センターにて診察予約を取得してからの受診となります。

医師紹介

氏名 補職名 認定資格 専門分野
児玉 芳季 部長
  • 日本泌尿器科学会専門医・指導医
  • 泌尿器腹腔鏡技術認定医
  • 日本内視鏡外科学会技術認定医
  • Certificate of da Vinci System Trainig as a console surgeon(泌尿器ロボット支援手術認定)
  • がん治療認定医
  • 医学博士
泌尿器疾患全般
松浦 昌三 医長
  • 日本泌尿器科学会専門医
  • Certificate of da Vinci Technology Training as a console surgeon(泌尿器ロボット支援手術認定)
泌尿器疾患全般
鍋島 優太 医長
  • 日本泌尿器科学会専門医
泌尿器疾患全般
西畑 雅也 応援医師
  • 日本泌尿器科学会指導医・専門医
  • 泌尿器腹腔鏡技術認定
泌尿器疾患全般
小牧 美江 応援医師
  • 日本泌尿器科学会専門医
泌尿器疾患全般

診療実績(主な手術数)

2020年 2021年 2022年 2023年 2024年
手術
<副腎・腎・腎盂>
根治的腎摘除術(開腹) 1 0 2 0 0
腹腔鏡下腎摘除術(根治的) 5 1 10 2 2
ロボット支援腎摘除術(根治的) 6
腹腔鏡下腎尿管全摘除術 1 8 1 15 4
ロボット支援腎尿管全摘除術 1
腹腔鏡下副腎摘除術 4 5 5 2 5
根治的腎尿管全摘術(開腹) 0 0 0 0 0
<尿管>
TUL(経尿道的結石手術) 75 75 88 58 82
ECIRS(経皮・経尿道的同時砕石術) 13
<膀胱>
膀胱全摘除術+回腸導管造設術 2 0 1 0 1
膀胱全摘除術+尿管皮膚瘻造設術 2 2 0 3 0
TUR-Bt(経尿道的膀胱腫瘍切除術) 72 85 74 65 57
膀胱砕石術 18 22 13 19 11
膀胱切石術 1
<前立腺>
前立腺全摘除術(ロボット支援) 2 0 (5) (26) (20)
HoLEP(ホルミウムレーザー前立腺核出術 29 22 25 36 32
経尿道的前立腺吊り上げ術(PUL) 1
<その他の手術> 31 34 41 28 29
合計 242 254 264 254 265
その他
ESWL(体外衝撃波結石破砕術) 11 21 13 11 12