放射線治療科

当科では、各種悪性腫瘍(がん)に対する放射線治療(外部照射)を行っています。放射線治療は、手術、化学療法と並んで、がん治療法三本柱の一つです。基本的に局所的な治療で、他の治療法に比べて体の負担が小さいといった特徴から、早期がんに対する治癒を目指す治療から転移がんに対する緩和的な(症状を和らげる)治療まで幅広く用いられます。2012年に更新した放射線治療システムにより、画像誘導放射線治療、定位放射線治療(脳、肺)、強度変調放射線治療といった高精度外部照射を改良・導入し、順次開始しました。

がんの治療においては、がんの種類、進行状況、全身状態により治療の目標を見定め、患者さんの意向を汲み取り、最適な治療法を選択する、あるいは組み合わせることが大切です。そのために、院内外の各診療科との連携を密にして診療にあたっています。また、初診時には、放射線治療についてなるべくわかりやすく説明して、患者さんが納得して治療をうけていただけるよう心がけています。

実際の放射線治療は、医師(放射線腫瘍医)や、診療放射線技師、医学物理士・放射線治療品質管理士、看護師などの多職種からなるチームで行います。それぞれの職種がもつ技術、長所を生かして、患者さんに安心して治療を受けていただけるようきめ細やかに対応していきます。

なお、他院で診療を受けておられ、当科を初めて受診される患者さんは、主治医(かかりつけ医)の先生を通じて、患者支援センターにてあらかじめ診察を予約していただき、主治医(かかりつけ医)の先生の紹介状および検査資料を持参下さい。

診療内容

悪性腫瘍(がん)、ごく一部の良性疾患(甲状腺眼症、ケロイドなど)に対する放射線治療

医師紹介

氏名 補職名 認定資格 専門分野
小倉 昌和 部長
  • 日本医学放射線学会・日本放射線腫瘍学会認定放射線治療専門医
  • 日本がん治療認定医機構がん治療認定医
  • 日本医学放射線学会研修指導者認定
放射線治療全般
亥埜 亜希 医長
  • 日本専門医機構放射線科専門医
放射線治療全般
渡邉 翼 応援医師
  • 日本医学放射線学会・日本放射線腫瘍学会認定放射線治療専門医
放射線治療全般

佐藤 玄基

応援医師
  • 日本医学放射線学会・日本放射線腫瘍学会認定放射線治療専門医
放射線治療全般

診療実績

2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023
放射線治療患者数(新規) 290 299 306 335 373 312 250 236 262 336
 原発部位別 脳・脊髄 10 3 7 6 5 4 3 6 6 6
頭頸部 50 36 49 48 60 47 44 47 51 44
食道 14 15 15 11 14 18 15 23 12 8
呼吸器 109 104 94 122 136 126 99 79 75 121
乳房 44 68 82 77 79 34 13 8 56 74
肝胆膵 7 13 9 10 5 8 4 4 7 8
胃大腸小腸 17 21 8 14 11 15 18 10 14 13
婦人科 5 6 8 5 5 7 6 7 4 5
泌尿器 14 20 17 19 38 29 31 36 23 44
血液リンパ系 6 4 4 9 9 13 7 7 6 6
皮膚骨軟部 3 1 3 6 8 6 1 4 3 1
その他の悪性腫瘍 5 5 5 3 1 0 2 1 1 3
良性疾患 6 3 5 5 2 5 7 4 4 3
放射線治療患者数(新患+再患) 355 374 353 390 450 390 314 290 301 407
緩和照射 骨転移 78 71 68 61 72 65 62 44 33 61
脳転移 54 54 33 44 62 53 41 33 24 35
特殊治療 頭部定位照射 21 22 16 24 28 33 18 20 22 18
体幹部定位照射 12 12 19 29 24 31 19 26 33 38
強度変調放射線治療 32 63 56 64 76 61 77
RI内用療法 4 2 1 0 2 0 0 0 0 1

放射線治療とは?

病変に放射線を照射することにより、がんを小さくしたり、がんによる痛みなどの症状をやわらげることを目指して行います。
抗がん剤と併用したり、手術の前後に行う場合もあります。
基本的に、関係する診療科と連携して診療を行います。

 

当院ではリニアック(X線・電子線による外部照射装置)を用い、以下の高精度照射技術を駆使して治療を行っています。

リアニック



患者さんに放射線治療を安全確実に提供するためには、使用する装置・システムが誤りなく動作すること、患者さんに照射する位置や線量が計画通り実行されることが、つねに保証されていなければなりません。とくに、高精度な技術を用いる放射線治療では重要です。当院ではこのような放射線治療の品質管理・精度管理を日常的に行っています。当院の使用機器や品質管理作業については、中央放射線部 放射線治療のページを参照ください。

画像誘導放射線治療(IGRT: Image-guided radiation therapy)

治療の直前に、照射位置を精密にあわせるために、骨あるいはその他の臓器・ターゲットなどの体内臓器をイメージング装置により撮影し、照射位置を照合・補正して行う治療です。

当院では、迅速(数分以内)に骨照合・位置補正が可能なシステムと、コーンビームCTを用いた臓器や病巣の照合が可能なシステムを併設し、病状・目的に応じて使い分けしています。いずれも、からだの深部にある病巣に対して、従来の、皮膚や固定具上の印と治療室内のレーザーをあわせる方法のみで行うより、照射位置精度の向上をはかることができます。頭部や体幹部(表在以外)に対する治療で積極的に実施しています。

igrt

 

定位放射線治療(Stereotactic radiosurgery/radiation therapy)

小さながん病巣に対して、精密に狙い、集中的に照射し、周辺の正常組織の線量を極力低減させる技術です。脳腫瘍(転移性もしくは原発性の一部)、ほかに転移のない原発性あるいは転移性の肺腫瘍、肝腫瘍、あるいは転移性脊椎腫瘍などに行います。部位・病状により1日~3週間程度で治療を行います。

igrt

 

頭部の定位放射線治療では、ミリメートル単位で厳密に位置精度を保つために、従来は金属製のフレームを患者さんの頭部に取り付け・固定することが必要で、痛みを伴う局所麻酔が避けられませんでしたが、現在は、麻酔不要のプラスチック製マスクによる固定と頭蓋骨照合による位置補正の組み合わせにより、高い精度が維持でき、患者さんの負担・苦痛を大幅に軽減できます。

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体幹部の定位放射線治療については、当院では2012年度に肺腫瘍に対して開始しました。腫瘍の位置や呼吸などによる生理的な移動などを見定めて、最適な照射範囲を決定します。呼吸移動の大きい場合には、息止めしていただいて照射する方法、もしくは呼吸のタイミングにあわせて照射する(呼吸同期照射)方法をとることもあります。

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3次元原体照射 (3DCRT: Three-dimensional conformal radiation therapy)

病変の位置や形状をCT/MRI/PETなどの画像を用いて立体的に同定し、病変の範囲に絞って、周辺の正常組織の線量を低減させて照射する方法です。当院では、CTシミュレータにより病巣位置・範囲を同定し、照射ヘッドに取り付けられたマルチリーフコリメータと呼ばれる5mm幅に並んだ短冊状の金属遮蔽板を病巣にあわせて絞りを入れることにより行います。

 

強度変調放射線治療 (IMRT: Intensity-modulated radiation therapy)

従来の3次元原体照射(3DCRT)を発展させた革新的な放射線治療技術です。
コンピュータ計算を駆使した最適化により、病巣の形状に凹凸があっても、なるべくその形にあわせた線量分布を得るように立案できるようになりました。これは、照射ヘッドに取り付けられたマルチリーフコリメータと呼ばれる5mm幅に並んだ短冊状の金属遮蔽板を、立案された計画通りになるよう厳密な制御下で連続的に動かすことにより放射線強度を変調させながら照射することにより実現可能となりました。当院では2017年度より開始しました。 2019年度より、強度変調回転放射線治療(VMAT:Volumetric -Modulated Arc Therapy)方式を導入することにより、線量分布をこれまでと同等以上にしつつ、IMRT照射にかかる時間が短縮し、患者さんにより優しい治療が実施可能になりました。

igrt

 

IMRT

前立腺がん

IMRTでは、従来の3DCRTと比べて、直腸や膀胱の線量をおさえつつ前立腺に対する線量を5-10%増加させることが可能となり、直腸障害などの副作用を低減し、さらに治療効果の上乗せが期待できます。また、手術適応のない局所進行期はもちろん、限局期の場合でも適応となり、手術や小線源療法と比べて、治療期間は長くなるものの、麻酔や穿刺などの痛みを伴う処置を全く必要としないメリットがあります。当院では泌尿器科と連携して、多くの場合内分泌療法と並行して行います。2020年より、一部の患者さんに対して、治療期間を従来の8週間から4週間に短縮した方法で行っています。

 

IMRT2

頭頸部がん

IMRTでは、病変には十分な線量を投与すると同時に周囲の重要臓器(耳下腺・脊髄・口腔粘膜など)への高線量を減らして照射することが可能です。治療後の口腔乾燥症状の軽減が期待できます。薬物療法と併用したり、手術の後もしくは前に行うこともあり、当院では耳鼻咽喉科、歯科口腔外科、腫瘍内科と連携して実施します。

その他にも、原発性脳腫瘍、頸部食道がん、子宮頸がん術後、などに対してIMRTが有用です。

 

ラジオアイソトープ(RI)内用療法

ゾーフィゴ(ラジウム223): 去勢抵抗性前立腺がんの骨転移に対して抗がん作用を持つ注射薬です。

 

当院での治療の流れ

初診※ ① 放射線治療担当医師から放射線治療の目的および予想される
効果と副作用について説明します。
② シミュレーション(治療前の準備)と治療開始日を決定します。
③ 看護師から今後放射線治療を始めるにあたっての注意点を
お伝えします。
シミュレーション
(治療前の準備)
① 放射線治療の位置決めとなるCTを撮影します。
② からだに目印となる線をペンでかきます。
(かかれた線を消さないように注意してください)
※患者さんによっては、撮影前に体に合わせた固定具の作成や、撮影前に食事・飲水などの制限を行う場合があります。
IMRT2 IMRT2
治療開始 基本的に、月~金の平日毎日照射を行います。時間は10-30分程度です。
治療期間中は、看護師、診療放射線技師などによる毎日の問診と医師による週1-2回の診察により、体調変化や副作用、効果などを確認します。 放射線治療に関することで困ったことがあれば医師・看護師にご相談ください。
終了後 定期的に受診いただき経過をみていきます。

※初診は原則紹介のみ